アラ・ハバキの「道の奥」廻り

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zoom RSS 前九年合戦、ふたりの金(こん)氏

<<   作成日時 : 2018/02/12 15:45   >>

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 前九年合戦を記した「陸奥話記」は陸奥国司兼鎮守府将軍源頼義・義家父子と奥六郡の主安倍頼良(頼時)・貞任父子の攻防を中心にすえているが、そのなかに「ふたりの金(こん)氏」の立場をこえた行動も色濃くつたえている。
 
ひとりは気仙郡司金為時で、阿久利川一件から衣河関にむけて奮戦し、そのご奥地三部への働きかけを成功させている。
 そしてもうひとりの磐井郡河崎柵の主金為行は黄海の戦いにおいて、頼良(頼時)亡きあとの貞任の後援をうけて国府軍に大勝するという働きをし、さらに厨川柵の攻防まで安倍一族の主力をなしている。


<金氏、安倍氏、清原氏図/金氏との姻戚関係からみた奥六郡安倍氏の抬頭過程の研究:遠藤祐太郎>
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 このふたりの金氏は敵味方に分かれてはいるが同族のようで、その名前からみて近い間柄ともみられている。

 金氏は三陸沿岸の気仙郡を本拠地とし、さらに奥六郡と接する磐井郡へ進出している。それぞれを代表する地位が気仙郡司であり磐井郡河崎柵の主だったとみられる。

 阿久利川一件の翌天喜(てんぎ)五年(1057)6月ごろ、気仙郡司金為時は「奥地俘囚」安倍富時を「甘言」をもって説くために北へむかったが、その道筋は「おそらく海路、三陸沿岸を北航し青森県八戸市辺で上陸する」(「蝦夷の末裔」高橋崇)だったと思われる。

「金氏との姻戚関係からみた奥六郡安倍氏の抬頭過程の研究:遠藤祐太郎」では、

 ― 気仙郡は建郡当初から前九年合戦期に至るまで一貫して太平洋岸最北の郡、陸奥国「海道」の終点であり、かつ鉄や琥珀の産地として知られる「閉伊七村」(岩手県三陸沿岸地域)や馬産地として知られる「鉋屋(かなや)・仁土呂志(にとろし)・宇會利(うそり)三部」の「奥地」(岩手県北部〜青森県三八上北地域)への玄関口でもあり、北方交易の集積地として栄えた要衝であった。 ―

のであり、また河崎柵の擬定地(一関市川崎町門崎)からは

 ― 11世紀代ものと推定される二条の堀が検出され、その「交通遮断」を重視した立地構造の一端が明らかとなった。“北上川の第二河口”とも言うべき地を支配した金為行率いる磐井金氏は、河川交通を介した交易・物流に深く関与していた可能性が高い。 −

と、ふたりの金氏が立っていた位置を論じ、“金氏あっての安倍氏と言っても過言ではなかった。とその勢力を高く評価している。

 そして金氏の分裂に前九年合戦の開戦原因を解くカギが隠されているのではないかと述べている。その理由をかいつまんで言うと、磐井郡の金氏と安倍氏の結びつきが強くなったあおりで気仙郡の金氏が圧迫された結果、磐井地方のもつ権益をとりもどすために反安倍氏の行動をとったのではないか、と推定している。


 気仙郡と磐井郡との関連について、平川南氏は陸前高田市に伝わる「武日長者」の伝説のなかでの采女貢進ルートが宮城県北部の栗原郡をへることに注目し、古代には三陸沿岸の気仙郡から京へ上るには沿岸から河川を遡って磐井郡にで、峠をこえて栗原郡から南下していた、としている。


 その後の金為時は国府軍が大敗した「黄海の合戦」のときには姿がみえず、五年後の康平五年(1062)の厨川柵攻防までの一連の戦いにも見当たらない。


 ふたりの金氏の動向を高橋富雄氏は講演「河崎柵と黄海の戦い」のなかで、次のように推理している。

 金氏の勢力は「安倍・清原・藤原と互角とまでいかないにしても、例えば安倍・清原・藤原を横綱とするなら、金為行、為時は大関クラスにはできます。」であり、黄海の戦いでは国府軍は「はじめから河崎柵をめざして進んできた。はじめからですよ。ということはこの戦闘が、広い意味では安倍氏征討、直接的には金為行征討をめざした戦いであった。」という。
それを迎えうったのは「河崎柵の主金為行率いる軍隊であって、安倍氏でなく磐井勢だったのだと、そういう考え方をする必要があり」、そんな戦いのなかで「源氏が総崩れになり、総大将まで討ち死にするようになるかも知れないというときに、最も頼りになるはずの気仙郡司金為時が動いた証拠が全くない」のは、「一族の中での了解の下」の行動ではなかったか。

 つまり「一家一族を守るためにです。ですからひょっとして、金一族の中にも、政府軍が良いときにはそっちで助けてやるけれども、安倍清原の勢力が良いときにはそっちの方を助けてやる。」という考えのもとに金一族の存続をはかったことになる。


 貞任の舅であったともいわれる金為行と東北における当時代表的な大量産金地帯だった気仙郡をかかえる金為時、ふたりを含む金一族の詳細はまだまだ不明な点が多い。




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